ジャズボーカルとは?学習する上で大切な3つのこと

この世にはたくさんのジャンルのシンガーが存在します。
ポップスシンガー、民謡、クラシック歌手(声楽家)、演歌歌手・・・。
そのなかで、ジャズボーカルとはいったいどんな歌い手を指すのでしょうか。
ジャズボーカルとは、ただジャズ・スタンダード(ジャズでよく演奏される定番曲)を歌う歌手を指すのではありません。
ジャズボーカル・ジャズシンガーが他ジャンルの歌手とどう違うのか。ボーカル講師Midoriの視点でお伝えします。

目次

スウィングできるか

ジャズ音楽がその他のジャンルの音楽で決定的に違う点は、第一にそのリズムです。

「スウィング」という単語をきいたことがあるでしょうか。

これは、ジャズ特有のフィール(リズム)のことで、体感的には、「はずんでいる(bouncy)」という感覚が近いでしょうか。
ジャズボーカルは、なによりもまず、この「スウィング」で演奏ができる歌手のことです。
ジャズの曲には、「スウィングしなけりゃ意味がない」という曲もあるほどです。笑
スウィングはとても心地よいリズムで、聴いているだけでもゆったりとリラックスできますし、速いテンポになると、スウィングではない通常のストレートなリズムよりも、体感的にテンポが速く感じられるスピード感の溢れるとてもエキサイティングなリズム・フィールです。

余談ですが、カフェでジャズ音楽がよく流れている理由の一つは、スウィングを聴くと、時間が実際よりも速く過ぎていると感じるので、結果お客さんのお店で過ごす時間が短くなり、お店の回転率があるから・・・という事情もあるとか。すごい戦略ですね・・・笑
実はこのスウィング、とても奥が深いんです。

レジェンド(巨匠)、と呼ばれる歴史に名を遺すジャズミュージシャンは、もれなく自分だけのスウィング・フィールをもっています。つまり人の数だけ、スウィングがあるのです。

このスウィング・フィールは、一生かけて勉強し、育ててていくもの。
ジャズミュージシャンにとって、スウィングとはメインテーマの1つなのです。

即興性があるか(フェイク・スキャット)

ジャズの醍醐味といえば、即興性(アドリブ力)です。
ジャズ音楽では、通常既存の曲を自分の解釈りで作り替え、または発展させて演奏しています。

つまり、その場その場で作曲して演奏しているのです。

楽器のジャズミュージシャンの方は、ビッグバンド等のきまった譜面があるもの以外は、ほぼ例外なくこのアドリブをとります。(「ソロ」という言い方をしたりもします。)

ジャズボーカルのソロは、特に「スキャット」、「フェイク」といいます。
「フェイク」は、メインテーマのメロディをもじったりして変奏しながら歌う歌詞ありの手法。
「スキャット」は、楽器と同じく、完全に声を楽器のように使ってアドリブをとる歌詞なしの手法です。

ジャズボーカルを他ジャンルのシンガーと区別するなら、まずある程度即興的な演奏ができるかどうか、これが重要な要素になってきます。

個人的には、無理にアドリブをする必要はないと思っていますが、(スウィング力の方が重要かな、と個人的には思っています)アドリブのできるボーカルでないと、ジャズボーカルだと認めない・・と考えていらっしゃるジャズミュージシャンも、実は多いです。

なぜ、ジャズボーカルにはアドリブ力が必要なのか。それは、ジャズという音楽の性質に理由があります。
ボーカルは楽器のミュージシャンとジャズを演奏する場合がほとんどだと思いますが、その際、楽器の人はほとんどの場合、ほぼ即興で演奏しています。
つまり、インストルメンタル(楽器)のジャズプレイヤーで即興をしない人はいないのです。

それに対して、もしボーカルが譜面通り、またはあらかじめ決めておいた演奏しかしなかったら、「面白い事故」が起こりづらいのです。

この場合の事故とは、ジャズ音楽の醍醐味そのものを指すといっても過言ではありません。
事故、というのは聞こえが悪いかもしれませんね。笑
言い換えれば、「化学反応」ってところでしょうか。

音楽は一人でやるものではなく、多くの場合アンサンブルです。
クラシックやポップスであれば、あらかじめ決められた、あるいは定番の演奏法をみんなで共有して、アンサンブルします。しかし、ジャズミュージシャンは、「即興」でアンサンブルするのが理想的です。

どちらか一方が即興で、どれちから一方が決められた書き譜であれば、ジャズの醍醐味である、「その場、そのミュージシャン達でしか味わえない、その時だけの音楽」はなかなか生まれません。

ボーカルはもともと歌詞もある分、ほかの楽器よりも制約が多く、楽器(人間の身体)の性質上、使える音も多くないため、即興が困難な部分もありますが、既存の曲にとらわれず、自分の音使いやリズムで音楽を表現していくこと。
そして音楽のなかで起こる「事故(化学反応)」を愉しむこと。
これこそが、ジャズボーカルがジャズボーカルたる所以の1つだと思います。

自由なマインドを持っていること

さて、ジャズボーカルとは。最後の項目ですが、わたしはこれが一番大事な要素だと思っています。

それは、「自由なマインド」をもっていること。

もちろんいくら自由といっても、いい演奏をするには、それなりのジャズの「形式」を学ぶ必要はあります。
しかし、本来はジャズにおいては、「ミス」はないのです。
どんな的外れな音を出しても、それすらアイデアにして、刺激的なフレーズにしてみたり。
そういうことが許されるのがジャズ音楽です。

日本人は完璧主義に陥りがちな方が多いので、自分が思い描いたとおりの演奏ができないと、落ち込んだり、人前での演奏がプレッシャーに感じたり、、ということがあると思いますが、

ジャズにおいて「ミス」を「ミス」にしているのは、プレイヤー本人なのです。

もともとジャズとは「自由の国」アメリカで生まれた「自由な音楽」です。
どんな音も自分で料理してやる。
そんな自由な精神が、ジャズミュージシャンに必要な精神だと思っております。

最後に

いかがだったでしょうか。
MMA講師Midoriが考えるジャズボーカル。
この3つの要素をもってセッションやライブに臨むことができれば、あなたは怖いものなしです!
また、普段練習するときでも、この3つを意識しながら練習に臨めば、最高に楽しくジャズ練習ができるはず!

是非是非お試し下さい!

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この記事を書いた人

東京音楽大学卒業。同大学院修了。
声楽を豊田千恵子氏、水野賢司氏および
加納里美両氏に師事。
在学中からクラシック、ジャズ、アイルランド音楽、シャンソン、創作音楽など枠にとらわれず、様々なジャンルの音楽で活動。
関西シャンソンコンクール グランプリ受賞。浜松シャンソンコンクール ドゥジエーム・プリ受賞。
現在はジャズミュージシャンとして関東を中心に活動中。最近は筋トレをしながらの歌練習にハマっている。

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