ジャズスタンダードって?ジャズプレイヤーに愛される名曲たち。

みなさんは、ジャズ・スタンダード(Jazz Standards)というものをきいたことがあるでしょうか。ジャズスタンダードとは、20世紀初頭ごろからはじまったジャズの歴史の中で、数々のジャズプレイヤーに愛され、演奏され続けている曲たちのことです。これらの曲は数百にものぼるといわれていますが、熟練のジャズプレイヤーになると、スタンダードのほとんどの曲は覚えていて、譜面なしでも演奏できてしまいます。
つまりジャズスタンダードは、ジャズミュージシャン同士の合言葉ともいえる定番の名曲たちなのです。

これらの曲は、ジャズ音楽のために作られたものもたくさんありますが、ジャズ以外の別のジャンルの音楽から拝借してきたものも多く存在します。実は、ジャズに普段あまりなじみのない方々でもどこかで耳にしたことのあるジャズの曲は、大半がこの他ジャンルからとってきたものだったりするんです。映画音楽、ミュージカル、ボサノバ、ポピュラー音楽、果てはクラシック音楽から民謡まで・・・
特に歌詞のある「歌もの」とよばれるジャズスタンダードは、ほぼこの拝借タイプです。
では、どんな曲があるのか、この記事では、そんなジャズの傑作たちをいくつかご紹介したいと思います。

目次

ブロードウェイ・ミュージカルのヒット曲

20世紀初頭のアメリカでは、数多くのミュージカルが生まれました。特にブロードウェイミュージカルは全盛期を極め、たくさんのヒット曲が生まれました。これらの曲はとてもキャッチ―で華やか。シンプルで洒落の聴いたポップなものや、聴く人の心をつかんで離さないような情熱的なバラ―ドまで、名曲の宝庫でした。ミュージカルとしての人気はイマイチだったけれど、曲だけが大ヒットした、なんてものも存在しています。ジャズ音楽も同時代に台頭してきた音楽なので、ミュージカルの影響を多大に受けています。多くのジャズボーカルやジャズミュージシャンたちがこぞってミュージカル・チューンを独創的な手法で自分のレパートリーに加えました。例えば、「My Favorite Things(私のお気に入り)」や「Over the Rainbow(虹の彼方へ)」などは誰もが知っている名曲です。

Over the Rainbow(虹の彼方へ) 1939年「オズの魔法使い」より

Over the rainbow(邦題:虹の彼方へ)は、1939年のブロードウェイミュージカル「オズの魔法使い」で、主演女優のジュディ・ガーランドが歌ったことで世界的なヒットを博した曲です。「遠い空のむこう、虹の彼方には、昔こもりうたの中で聞いた場所があって、そこでは悩みなんてレモンドロップのように溶けちゃうのよ」なんて。とても愛らしくてとろけそうな魅力的な歌詞。この曲は同年のアカデミー音楽賞も受賞しています。

原曲はこのような感じ↓

ジャズプレイヤーが演奏するとこんなテイストに!↓

映画音楽

20世紀は、ハリウッド映画の黄金期でもあります。映画音楽もまた、多くのジャズミュージシャンが取り上げたジャンルでもあります。「Stella By Starlight(星影のステラ)」、「 The Days of Wine and Roses(酒とバラの日々)」など。また、ディズニー映画の愛らしくて美しい音楽も、こぞって演奏されました。たとえば、「Some Day My Prince Will Come(いつか王子様が)」、「When You Wish Upon A Star(星に願いを)」などはとても有名ですよね!

the Days of Wine and Roses(酒とバラの日々)映画「酒とバラの日々」より

1962年の映画「酒とバラの日々」のテーマソングとして、ヘンリー・マンシーニが作曲。マンシーニはMoon Riverの作曲家としても有名です。また、同年のアカデミー歌曲賞も受賞した大ヒット曲です。

とてもロマンチックなバラードです。映画の中では、
主人公が恋人に対して歌う、セレナーデになっております。

こちらは女優であり、ジャズシンガーでもあるジュリー・ロンドンの歌唱。
とても艶があってロマンチックですね・・・

この曲も、ジャズマンが演奏すると・・

こんなスウィンギーなチューンに大変身!

ボサノヴァ

南米には「ボサノヴァ(Bossa Nova)」という音楽ジャンルがあります。これは、20世紀半ば、ピアニストであり作曲家のアントニオ・カルロス・ジョビンが確立した音楽で、「ラテン」とよばれる音楽の一種になります。このボサノバは、比較的ゆったりとしたテンポで演奏されることも多く、とても耳障りの良いコケティッシュな音楽で、非常にリラクシングな音楽です。日本でもカフェなど、至るところで耳にするこのボサノバも、ジャズミュージシャンの大好物。このボサノバは、歌詞つきの曲で、原曲はポルトガル語の場合がほとんどですが、ジャズシンガーは英語の歌詞で歌うことも多く、原曲とはまた違ったニュアンスをもつボサノヴァが楽しめます。有名なボサノヴァとしては、やはり「イパネマの娘」が代表格でしょうか。また、ボサノヴァは一般的にゆったりとしたテンポのイーブン(跳ねない)・フィールでの音楽ですが、ジャズミュージシャンが演奏すると、スウィングになったり、軽快なテンポになったり。これもジャズの醍醐味ですね。

Garota de Ipanema (イパネマの娘)

ボサノバの曲のなかで、もっとも有名な曲を挙げろといわれたら、間違いなくこの「イパネマの娘」でしょう。この曲は、作曲者であるジョビンが、イパネマ海岸で出会った美少女にインスパイアされて作られた曲です。この曲は、世界中で最もカヴァーされた曲としても知られており、日本でもカフェやデパート、いたるところで耳にすることができます。コケティッシュでとてもかわいらしい、ポルトガル語の美しい響きと見事に調和する名曲です。

こちらは、元祖ジョアン・ジルベルトが歌ったオリジナル。

こちらは作曲者ジョビンと、作詞者のモライスの競演。

こちらはジャズ界の女王エラ・フィッツジェラルドの歌唱。
ラテンリズムの中にもスウィング感を感じますね・・・!

こちらはジャズ界のレジェンド スタン・ゲッツの演奏。

多彩な音楽の魅力を併せ持つ、ジャズ音楽

いかがだったでしょうか。ジャズスタンダードでは、ほかにもラテンサンバや民謡やクラシック音楽、シャンソンなどから曲を引用しています。世界中の様々な音楽の魅力をつまみぐいできるようなジャズの世界。これもまた、ほかのジャンルでは味わえないジャズ音楽の魅力だと思います。世界中の音楽に触れて、それらを自分のテイストで仕上げていく喜びは、ジャズならではの醍醐味です。もちろん同じジャズスタンダード曲でも、ジャズアーティストの数だけ演奏の個性が存在します。今はApple MusicやYou Tubeで世界中のプレイヤーの演奏を好きなだけ堪能できる時代です。あなたも、たくさんのお気に入りのミュージシャンの演奏を探してみては?

この記事を書いた人

東京音楽大学卒業。同大学院修了。
声楽を豊田千恵子氏、水野賢司氏および
加納里美両氏に師事。
在学中からクラシック、ジャズ、アイルランド音楽、シャンソン、創作音楽など枠にとらわれず、様々なジャンルの音楽で活動。
関西シャンソンコンクール グランプリ受賞。浜松シャンソンコンクール ドゥジエーム・プリ受賞。
現在はジャズミュージシャンとして関東を中心に活動中。最近は筋トレをしながらの歌練習にハマっている。

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